「孔雀夫人」(横溝正史)

そのサスペンスが読みどころです。

「孔雀夫人」(横溝正史)
(「横溝正史ミステリ
  短篇コレクション②」)柏書房

「孔雀夫人」(横溝正史)
(「塙侯爵一家」)角川文庫

新婚旅行の最中に
土岐俊吉を呼び出した女。
それは彼の恩師の奥方であり、
その驕慢さんから
「孔雀夫人」と呼ばれていた。
帰ってきた俊吉の
ただならぬ表情に、
俊吉の妻・有為子は、
言い知れぬ不安を覚える。
やがて俊吉が逮捕され…。

昭和十二年に発表された
横溝正史の中篇推理です。
有為子の身にも危険が迫る中、
俊吉の無実をどう証明していくか、
そのサスペンスが読みどころです。
まずは登場人物一覧を。

【登場人物】
土岐有為子
…主人公。夫・俊吉の無実を信じる。
土岐俊吉
…有為子の夫。孔雀夫人から一方的に
 好意を寄せられていた。
瓜生奈美子
…通称・孔雀夫人。
 驕慢であり、自分の思い通りに
 ならない俊吉に憎悪する。
瓜生博士
…奈美子の夫。俊吉の師。
島津圭子
…有為子の先輩であり親友。
島津慎介
…圭子の夫で新聞記者。
 俊吉の無実の立証に奔走する。
青沼ジュリアン
…根の純真な不良少年。
 島津が面倒を見ている。
お勢
…ジュリアンの恋人。
 行方不明となっている。
黒眼鏡の男
…事件の鍵を握る怪しい人物

本作品の読みどころ①
周到に張り巡らされた罠

俊吉の逮捕の容疑は喜寿役夫人殺害。
夫人の胸には
ナイフによる刺し傷があり、
崖から投げ捨てられていた。
俊吉と孔雀夫人が連れ立って歩く姿は
目撃されている。
動機も十分にある。
さらには謎の黒眼鏡の男が撮影していた
一枚の写真には、
孔雀夫人の喉に手をかけている、
殺意に満ちた俊吉の顔が。
この絶対的に不利な状況を、
どう乗り越えるか。
そのサスペンスが読みどころです。

本作品の読みどころ②
名探偵は新聞記者・慎介にあらず

横溝の戦前の探偵小説に登場する
新聞記者探偵はご存じ三津木俊介。
それと何やら名前が似ている
島津慎介とくれば、
こちらが探偵役かと思ってしまいます。
しかし彼はある程度の
推理を組み立てるだけで、
実際に行動し冒険しているのは
有為子です。
黒眼鏡に雇われた男に
貞操を奪われそうになったり、
瓜生博士宅に乗り込み
直談判したりと奔走します。
そのサスペンスが読みどころです。

本作品の読みどころ③
黒眼鏡の男の正体や如何に

読み手からすると
俊吉の無罪はすぐわかります。
しかし黒眼鏡の男は一体
どんな役割を演じているのか。
なぜ執拗に有為子を付け狙うのか。
そのサスペンスが読みどころです。

戦後の横溝の傑作長編群の
おどろおどろしさを
読み慣れた者からすれば、
戦前の中編作品はあまりに展開が早く、
いささか面食らうかも知れません。
これも横溝の作品世界の一面なのです。
そのサスペンスを、
十分に堪能しましょう。

〔本書:横溝正史ミステリ短篇
  コレクション①の収録作品一覧〕

「鬼火」
「蔵の中」
「かいやぐら物語」
「貝殻館綺譚」
「蠟人」
「面影双紙」
「塙侯爵一家」
「孔雀夫人」
「鬼火(オリジナル版)」

(2018.9.15)

Enrique MeseguerによるPixabayからの画像
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【柏書房:横溝正史
   ミステリ短篇コレクション】

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